ストラトのアームの使用でチューニングが狂うことは少なくありません。
それはシンクロナイズドトレモロの構造にあります。
ここではストラト愛用者のためにその調整方法を解説。フローティングからスプリング、弦高まで完璧に説明しています。
シンクロナイズドトレモロとは?
私は、このネーミングに、ずーーーっと違和感を持っていました。
シンクロナイズド = 6個の駒が連動する → これは納得
トレモロ = え!? トレモロって、マンドリンの「テレレレレ」っていうピッキング奏法のことじゃないの?
トレモロとは、本来、クラッシックギターの名曲「アルハンブラの思い出」のように、細かいピッキングで音を連続させる演奏法のことです。
ですから、アームユニットのように音程を上下させる奏法や歌唱方法は、本来はトレモロではなくビブラートと呼ばれるものなのです。
一説には、トレモロユニットは、フェンダー社がビブラートとトレモロを間違えてネーミングしたと言われています。
ですから、シンクロナイズドトレモロユニットではなく、シンクロナイズドビブラートユニットというのが正しい呼び方だと思います。
もっとも、フェンダー社がトレモロユニットとネーミングを付けている以上は、すでに揺らぎない知名度が確立されているので、意義は唱えられませんが・・
ビブラート・ユニットの種類と比較
今回、取り上げているビブラートユニットはシンクロナイズドトレモロユニットですが、他にも数多くのビブラートユニットがあります。
本編に入る前に、いくつかご紹介しておきましょう。
ビグスビー
グレッチやギブソン、エピフォンなどのフルアコやセミアコに採用されているユニットです。
アルミ製のゴツイ見た目がオールディーズ感に溢れて独特の雰囲気があるため、愛好者も多く存在し、1940年代から現役で活躍中。
モズライト ビブラミュート
ビグスビーがロックンロールの時代ならば、モズライトはサーフミュージック時代の象徴的なギターです。
こちらも、ビグスビー同様にゴツイ印象を受けるユニットで、基本的にはビグスビーと同じ原理でビブラートがかかります。
ダイナミックビブラート
テールピースにアームが直付けされ、アーミングをするとテールピースが動くことにより、音程が変化します。
フローティングトレモロ
フェンダー社のジャガーやジャズマスターに、搭載されているトレモロユニットです。
テールピース部分のプレートが2枚構造になっており、トッププレートの下にL字状のアンダープレートがあります。
ギブソンのビブラートユニット
ギブソン社も、いくつかビブラートユニットを開発していますが、どれもユニークな構造のものです。
シンクロナイズドトレモロユニットの構造
シンクロナイズドトレモロユニットは、他のビブラートユニットと比較してもチューニングが安定しているだけでなく、ビブラート幅も大きいと言われています。
その要因は、シンクロナイズドトレモロユニットの構造にあるのです。
シンクロナイズドトレモロユニットは、ユニットを固定している6本(ノーマルは6本、仕様によって2本もある)のネジが支点となり可動します。
シンクロナイズドトレモロユニットの表の構造
ユニットに取り付けられたアームを押し込むことにより、ユニットが前傾して弦の張力が下がるので、弦の音程が下がります。
シンクロナイズドトレモロユニットの裏の構造
ユニットはT字になっており、ボディの裏面に張られているスプリングをユニットに引っ掛けることで、アーミングをした際にスプリングが伸縮して、元の位置に戻ります。
シンクロナイズドトレモロユニットのメリット
シンクロナイズドトレモロユニットのテールピース部分は、トレモロユニットのサスティーンブロックを通して、表面のサドルブリッジの駒を通りブリッジを経由する形状なので、テールピースからブリッジ部分の距離がほとんどありません。
又、ブリッジの駒もユニットに固定されているので、アーミングの際には駒も連動します。
そのことにより、駒の上を弦が移動するということも、ほとんどありません。
シンクロナイズドトレモロユニットは、この2つの特徴のおかげでチューニングの安定性が格段にアップしているのです。
シンクロナイズドトレモロのチューニングが狂う原因
ビブラートユニットを使用してチューニングが安定しない原因は2つあります。
それは、
- ペグの精度
- 弦の摩擦
です。
以下ではシンクロナイズドトレモロのチューニング狂いの原因をすべて排除する方法を解説しています。
シンクロナイズドトレモロのチューニングが狂わない対策一覧
1.ペグの精度と糸巻き
いわゆる、糸巻ですね。
ペグは、ガタついていてはいけません。
ペグのつまみを回してみて、ガタガタしていたり、遊びが多いものは交換しましょう。
ペグの交換は、止めねじやナットを外すだけなので、やる気があれば簡単にできますが、自身がない人は、楽器屋さんにやってもらいましょう。
2.弦の張り方
弦を張る際も、注意が必要です。
ペグに弦を巻き付けてから、2回転くらいでチューニングできるようにします。
長すぎると、チューニングが安定しませんし、1回転以上巻き付けないと、ペグ側で弦が切れてしまいます。
巻き付け方は、上から下へ、隙間なく、しっかりとキレイに巻き付けます。
巻いている弦が重なったり、グシャグシャでは、チューニングは安定しません。
弦を巻き始めたら、張力を加えた状態で巻き付けてください。
しっかりとした張力で巻き付けないと、チョーキングをしただけでもチューニングは狂ってしまいます。
すべての弦を張り終えたら、チューニングをしてください。
チューニング後のチェック
チューニングが終わったら、1本1本弦をつまんで引っ張ってみます。
引っ張るときは、スラップ程度の力でやってください。
ぐいぐいやりすぎると、せっかく張った弦が切れてしまいますので、ほどほどの力でやるのがポイント。
これで、ピッチが下がるようだと巻きが甘いので、この作業を繰り返して、ピッチが下がらなくなればOKです。
3.ストリングスガイドの摩擦抵抗対策
ノーマルのストラトの場合、ストリングスガイドは鉄の板をM型(カモメ型)に曲げたものが取り付けられています。
ストリングスガイドは、弦にテンションをかけるために取り付けられているので、弦をヘッドに押さえつける力が働いています。
そこを弦が移動するわけで、当然、摩擦抵抗が発生。
アーミングが終わっても弦がもとの位置に戻りきれなければ、チューニングが変わってしまうことになります。
その対策として、ストリングスガイドの弦が当たる面に潤滑油を塗る方法があります。
しかし、鉄弦に油分は大敵なので、使用する潤滑油は何でも良いというわけにはいきません。
最近は、楽器用にシリコングリスなどが販売されており、ネット通販で簡単に入手できますから、それらを使うことをおすすめします。
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ストリングスガイドの摩擦抵抗を軽減させるメンテナンス
つまようじが良い理由は、先端が細くてグリスを少量に調節できること。
色々使った結果、家あって、安い、つまようじはストリングスガイドのメンテナンスにピッタリ。
少しだけでいいです。ダマにならないように気をつけてください。
爪楊枝の先に、ほんの少しだけつけて、ストリングスガイドと弦が接触する部分に塗っていきます。
少しづつ、何度もグリスを塗ってこすってを繰り返して、なじんだら完成。
私が使ったフリーダムカスタムギターリサーチグリスはコチラ
Freedom Custom Guitar Research SP-P-08 Silicone Grease シリコングリス
又、カモメ型のストリングスガイドは摩擦が大きいため、グリスを塗らなければなりませんでした。
しかし、ローラー式のストリングスガイドならローラーがあらかじめ摩擦を軽減してくれるため、摩擦抵抗の少なくなります。
ローラー式のストリングスガイドは販売されているので、それらに交換するのも有効な方法です。
ネット通販で簡単に入手できます。
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4.ナットの溝の摩擦対策
ナットに切り込んである溝が、弦の太さと合っていない場合も、摩擦抵抗が大きくなり、チューニングが狂う原因となります。
チューニングでペグを回すたびに、ナット周辺でギシギシやキリキリといった異音が発生する場合は、ナットの溝が狭いことや、ナットと弦の滑りが悪いことが考えられます。
溝に入る幅の棒やすりで数回擦ってあげると改善する場合が多いですが、弦交換の際に、外した弦をナットの溝に通し数十回程度、シゴいてあげても良いと思います。
しかし、ナットの溝から弦が浮いていたり、開放弦がシタールみたいにビヨ~ンとビリついている場合は、リペアショップで調整してもらいましょう。
ナットの溝が弦にピッタリになったら、ここにもシリコングリスを塗っておきます。
手順1
手順2
又、最近ではナットの溝切用ヤスリも、ネット通販で入手可能になりましたから、自分のリペアスキルを磨いてみても良いと思います。
ナットの溝がキチンと調整できたらば、溝にも楽器用グリスを塗っておくと良いと思います。
又、フェンダー社などから「ローラーナット」というパーツも販売されています。
これに交換しておけば、弦の太さや摩擦による抵抗を、初めからかなり軽減することができます。
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5.ブリッジ部のメンテナンス
シンクロナイズドトレモロユニットの場合、サスティーンブロックから出てきた弦は、ブリッジの駒との距離が短く、駒自体がユニットと連動するので、この部分の摩擦は、あまり考えなくてもよさそうです。
それでも気になる人は、ブリッジ部分の弦が当たる所だけにグリスを塗ると良いかもしれません。
又、シンクロナイズドトレモロユニットのローラーブリッジ(ローラー付の駒6個)が販売されていますから、それらに交換するのも有効な対策です。
私は、シンクロナイズドトレモロユニット用のローラーブリッジは使ったことがありません。
その理由はこの部分がローラーになると、弦の振動を吸収してしまい、サスティーンに影響が出るかもしれないという心配がありるからです。その点を考慮して、個人的には導入を躊躇しています。
私はサスティーンをとってしまいました。
シンクロナイズドトレモロの調整はどこから始める?
ストラトのアームは、弦の張力とボディの裏側に張っているトレモロスプリングの張力のバランスでセッティングが決まります。
ですから、シンクロナイズドトレモロ調整で最初に行うことは、スプリング調整なのです。
弦の張力が強くなるほどトレモロユニットは起き上がり、スプリングの張力の方が大きくなるとユニットはボディに「ベタ付き」になります。
スプリングの張力は使用する本数が多いほど大きくなりますし、スプリングハンガーのボルトを締めこんでも大きくなります。
一方で、アーミングの感触はスプリングの本数が多いほど重くなりますし、スプリングの本数が減るほど軽くなります。
シンクロナイズドトレモロにおけるスプリングのかけ方
スプリングのかけ方は、以下のような種類があります。
スプリング5本かけ
すべてのフックにスプリングを取り付けます。
こうすることでスプリングの張力が最大になるので、ベタ付けを維持する人やアームを使わない人におすすめのかけ方です。
スプリング5本かけはこんな人におすすめ
- ベタ付けの維持
- アームを使わない人
スプリング4本かけ
アームは使わない。でも5本かけだと弦のテンションがキツイ。
そんな人はスプリングの4本掛けにしてみてはいかがでしょうか。
4本掛けの微調整はチョーキングをした時にユニットが浮くくらいにするのがベスト。
こうすることで運指の際に感じる弦の硬さが和らぎます。
また4本がけはアームを使う人にもオススメ。アームを使いながらもチューニングを安定させたい人にもオススメできる比較的バランスの良い調整方法です。
スプリング4本かけはこんな人におすすめ
- アームは使うけどチューニングは狂わせたくない
- 5本かけだと弦のテンションがキツイ人
スプリング3本ストレートかけ
最もオーソドックスなスプリング調整です。
ストラトのアームを使うけどチューニングを狂わせないようにする調整です。
ストラトのマニュアルにもこの3本掛けのスプリングが基本とされています。
また、3本掛けでフローティングは3ミリ、これが公式の答え(ド定番)です。
スプリング3本かけはこんな人におすすめ
- ストラトトレモロ調整のオーソドックス
スプリング3本ハの字かけ
この3本のスプリングをハの字のようにして掛ける方法は、ヴァンヘイレンが登場したころに認知され始めました。
その派手なアーミングが繰り出されているシンクロナイズドトレモロの調整が狂わないよう、仕掛けれらていた工夫がこの3本ハの字掛けです。
これを、様々なギター雑誌が取り上げ、急激に浸透していきました。
また、シンクロナイズドで派手なアーミングを繰り出してもチューニングが狂わない他、さらにアーミングタッチが軽くなると、派手なアーミングを好むギタリストに愛用されるかけ方となったのです。
ちなみにこのスプリング3本ハの字かけは決してイロモノではなく、現在では普通のかけ方として浸透しています。
スプリング3本ハの字かけはこんな人におすすめ
- 派手アーミングでもチューニングが狂わない
- 軽いアーミングタッチ
- 現在のオーソドックス
スプリング2本ハの字かけ
シンクロナイズドトレモロにおけるアーム操作において、このスプリングのかけ方が最も軽いアーミングタッチを実現できます。
しかし、やはりスプリングが2本しかかけていないので、チューニングがかなり狂いやすいです。
この場合、フロイドローズなどのロック式チューニングシステムを導入しないとかなり扱いにくいと思います。
スプリング2本ハの字かけはこんな人におすすめ
- 究極に軽いアーミングタッチ
3本かけのバリエーション
同じ張力を得る場合、これらの組み合わせで、アーミングの感触が変わります。
一概にコレ!とは言えないですので、研究がてら色々試してみることをオススメします。
【同じ張力を得る場合の組み合わせ】
- スプリングの本数を多くし、スプリングハンガーを緩めにする(アーミングのタッチが重い)
- スプリングの本数を減らし、スプリングハンガーを締めこむ(アーミングのタッチが軽い)
シンクロナイズドトレモロユニットのスプリングとアームのジレンマ
シンクロナイズドトレモロユニットは弦とスプリングの張力バランスがネック。
したがってシンクロナイズドトレモロユニットを最初に調整する部分は、張力バランスの兼ね合いです。
アーミングを重くすると、復元力が強くなるので、チューニングが狂いにくくなります。
逆に、アーミングが軽くなると、復元力が弱まりますから、チューニングが狂いやすくなります。
又、ストラトのトレモロスプリングは、シタールの共鳴弦のようにリバーブ効果の役目も果たしてくれます。
共鳴効果を高くするためには、スプリングの張力を減らしたほうが良いので、トレモロスプリングは5本かけて、なるべく張力を弱くすると良いでしょう。
個人的には、アームのタッチは「スプリング3本ハの字かけ」が一番しっくりきて、使いやすいです。
しかし、ここで注意していただきたいのが、トレモロスプリングの弾性はいくつもの種類があるということです。
特に、チューニングロック式ユニットに付属しているトレモロスプリングは、ノーマルストラトよりも固いものが多いので、一概に3本かけがおすすめというわけではありません。
トレモロスプリングの固さや、スプリングハンガーの締め具合でもコンデションが変わりますから、色々と試してみるほうが良いと思います。
ストラト/シンクロナイズドトレモロユニットのフローティング調整
シンクロナイズドトレモロユニットのスプリング調整方法で、
- チューニングした際にユニットがボディに密着している状態を「ベタ付き」
- 少し隙間が空いている状態(前傾している状態)をフローティング
と言います。
フェンダー社のマニュアルによりますと、「スプリングはストレート3本張りでトレモロユニットは3mm浮かせるのが標準」と記載されています。
つまり、本来の設計ではフローティングが前提ということのようです。
シンクロナイズドトレモロのフローティング調整方法
トレモロスプリングのかけ方を決めてください。
前項目の「アーミングのタッチ」を参考に、操作性をとるか安定性をとるかの兼ね合いを見つけましょう。
スプリングハンガーを固定しているボルトを、きつめに締めておきます。
チューニングした時には「ベタ付き」状態になっていなればいけませんので、あらかじめ強めに締め付けておいてください。
まず、最初にチューニングをします。
次に、チューニングメーターでピッチを確認しながら、スプリングハンガーのボルトを左右均等になる等に緩めていきます。
チューニングが下がってきたなと思うところでボルトを緩めるのを止め、再度、チューニングします。
すると、トレモロユニットが、ほんの少し浮いてくるはずです。
再び、スプリングハンガーのボルトをゆるめ、ピッチが下がったところで止め、チューニングをします。
トレモロユニットの浮きが3mmになるまで、この作業を繰り返します。
この状態で、チューニングが安定すればOKです。
すべての弦をチューニングした時点でユニットの端がボディから3mm程度浮きあがった状態が、フェンダー公式がベストとしているフローティング調整。
以上で、フローティング調整は完了です。
ストラト/シンクロナイズドトレモロユニットの弦高調整
ラジアスゲージが便利
ベタ付きかフローティングかによっても、弦高は若干ですが変わります。
ですから、弦高調整の前にまずはフローティング調整は済ませておきましょう。
さて、弦高調整ですが、この作業の精度が楽器の弾きやすさを決定すると言ってもいいほど、重要なポイントです。
指板には、緩やかに湾曲加工がなされているのはご存じですか?
これは、ネックを握りやすくするための加工で『R(アール)』と言います。
R加工はエレキギターやアコギ、エレアコなど、ほとんどのギターに施されています。
特に、ヴィンテージギターでは、R加工がキツイものもあり、2弦あたりをチョーキングすると、音づまりするものまであるのです。
昔はチョーキングという奏法がなかったので、このような形状の指板が存在していたそうで、現在の奏法では使いにくいことこの上ないです。
一方で、クラッシックギターのネックは握らない演奏法なので(ネックの上から親指が見えただけで、ギターの先生に怒られます)大昔から指板は直線のフラット加工です。
話を戻します。
弦高調整する場合、取り付けられているネック指板のRにブリッジ側の各弦の高さを合わせつつ、弦高を調整しなければなりません。
以前は、目測でやっていましたが、今回はこの記事を書くにあたり、しっかりとした調整方法をご紹介しようと思い、『ラジアスゲージ』を購入しました。
レスポールのように駒の高さが調整できない楽器には不要ですが、ストラトなどのフェンダー系ギターやベースは、個々の弦で調整できますから、1セットは持っていたほうが良いでしょう。
ストラトの弦高調整の注意点
トレモロユニットの弦高は、駒の小さな穴に六角レンチ(通常は楽器に付属して販売されています)を差し込んで調整します。
上から見て、時計方向に回すと弦高は上がり、反時計方向に回すと弦高は下がります。
この操作をする際に気を付けてほしい点があります。
それは、チューニングしてある場合、弦は駒を押さえつける方向で圧力がかかっているということです。
ですから、その状態で弦高を上げることは、通常よりも負荷がかかるので、レンチが折れたり曲がったりするリスクがあります。
これを避けるためには、駒を上げる際に、その都度、弦を緩めるしかありません。
逆に、下げる方向はチューニングしたままでも問題ありませんので、スムーズに弦高調整をしたいのなら、あらかじめ弦高を高めにしておき、徐々に下げていくほうが良いと思います。
ストラトの弦高調整の手順
弦高を高めに上げておいて、チューニングします。
少し弦高を下げてチューニングし、弾いてみて感触を確認します。
まだ下げたほうが良ければ、少し下げてチューニング・・
これを繰り返して、大まかな弦高調整をします。
早速、購入したラジアスゲージの出番。
一旦、全ての弦を緩め、指板から外します。
全部で9枚のラジアスゲージを1枚ずつ指板に当てていき、一番隙間が少ないゲージを探します。
その方法は簡単です。
ゲージの後ろから光を当てて、指板とゲージの間から光が漏れていないかを確認すればよいのです。
全く漏れないのが理想ですが、ピッタリしたものが無ければ、なるべく近いものをチョイスします。
指板から外した弦を戻して、軽く張力がかかるまでペグを巻きます。
あくまでブリッジの形状を確認するためのものなので、チューニングしてはいけません。
先ほど、チョイスしたゲージを弦の下にもぐらせて、ゲージのRと一致するように駒のイモネジにレンチを差し込み調整します。
調整が済んだら、チューニングをして弾き心地を確認します。
気になる点があったら、弦を緩めて微調整をして、再度チューニングをします。
この繰り返しを、納得のいくまで行っていきますが、ブリッジのRが崩れないように、常に全部の駒を同じだけ上下させることを忘れないでください。
ストラトのトレモロユニットと弦高と音の関係
- 弦高は、可能な限り低くしたほうが良いのでしょうか?
- どこまで下げればいいのでしょうか?
確かに、弦高を下げるほど、弾きやすくなります。
反面、弦高を下げることによって発生するデメリットも知っておく必要があります。
弦高調整のまとめとして、それぞれのメリットとデメリットについてあげておきますので、
参考にして、自分なりのベストな弦高を見つけてください。
- ストラトの弦高が高いと?
-
弦高が高くなると、弦の張力が強くなり、一音一音が八基地とクリアになってコシが出てヌケも良くなります。
特に、カッティングの場合に、音がブライトになりバンドの中でも存在感が増しますし、ピックに弦がまとわりつく感じも減るので、速弾きにも向いています。
反面、押弦に力が必要になり、弾きにくさが出てきます。 - ストラトの弦高が低いと?
-
弦の張力が弱くなるので、弾きやすくなります。
スィープやタッピングもやりやすくなり、よりテクニカルなプレイも可能になります。
反面、サスティーンも少なくなり、ビビりや音づまりを起こしやすく、ハリがなくなりブライト感や音ヌケも乏しくなります。
出音をとるか?弾きやすさをとるか?
相反する矛盾のどこで折り合いをつけるか、妥協点をどこにするのかが難しい所です。
ストラト/シンクロナイズドトレモロユニットのオクターブ調整
弦高調整が終わったら、最後の仕上げ、オクターブ調整をします。
オクターブ調整とは?
ギターの12フレットは、基本的に弦長の1/2の位置にあります。
つまり、理論上は開放弦と12フレットは1オクターブの関係にあるはずなのです。
しかし、実際には弦の太さや弦高によって、12フレットが開放弦とオクターブの関係であることはありません。
なぜ、このようなことが起こるのかと言いますと、指板(フレット)と弦の間に、隙間(弦高)があるからです。
しかし、隙間が無ければ弦が振動できませんので、こればかりは排除するわけにはいきません。
一方で、押弦するということは、その隙間分を縦方向にチョーキングしている状態です。
ですから、12フレットの位置が正確に弦長の1/2の位置にあったとしても、弦高の分は音程が高くなってしまうのです。
そこで、高くなる分、弦長を長くすることで調整するのが、オクターブ調整です。
作業の内容は、簡単です。
【オクターブ調整の概要】
1.チューナーを使って、開放弦を正確にチューニングする。
2.12フレットを、普段演奏する力で押弦し、チューナーの音程を確認する。
①音程が高ければ、ボディエンド側へブリッジを下げる。(弦長を長くする)
②音程が低ければ、ブリッジをネック側へ寄せる。(弦長を短くする)
ストラトのオクターブ調整のやり方
ストラトのオクターブ調整は、駒を固定しているネジで行います。
このネジを回す時は、弦を緩めてから行ってください。
チューニングしたまま駒を動かすと、弦が痛んでしまい、正確に調整ができなくなります。
又、チューニングした状態(弦の圧力がかかったまま)でネジを回しても、重くて回らずネジ溝をつぶしてしまったり、イモネジやユニットプレートが削れる可能性もあります。
ストラトのオクターブ調整はこのことを前提に進めていってください。
全ての開放弦を正確にチューニングします。
特にフローティングのストラトの場合、全ての弦を正確にチューニングした時点でトレモロユニットが
3mmフローティングするように調整してありますから、キチンとチューニングしないと弦高が変わってしまいます。
12フレットを押さえてピッチを確認します。
高かった場合は【STEP4】を、低かった場合は【STEP5】をご覧ください。
まず、弦を緩めます。
次に、ボディエンド側から対象となる駒のネジ溝にプラスドライバーを差し込み、右側(時計方向)へ回します。
回す加減は、どれくらい低いかによりますが、1回転から3回転くらい回してみてください。
その後、再びチューニングをして、メーターを確認します。
高ければ、同じ作業を繰り返します。
逆に、低くなってしまったら、前回と逆方向(左側)へ先ほど回した量の半分ほど戻します。
開放弦と12フレットの押弦の差がなくなるまで、この作業を繰り返します。
駒を動かすので、弦を緩めます。
次に、ボディエンドから対象となる弦のネジ溝にプラスドライバーを差し込み、左側(反時計方向)へ回します。
回す量は1回転から2回転程度にしておき、再度チューニングをして開放弦と12フリットの押弦の差を確認します。
まだ、高いようだったら、同じ作業を繰り返し、逆に高くなってしまったら、先ほどと逆方向にネジを回して、開放弦と12フレットの押弦の差がなくなるまで、この作業を繰り返します。
以上の作業を6弦分行うので、テレビでも観ながらダラダラと気長にやってください
ストラトの調整が終わったら弦を馴染ませる
全ての調整が終わったら、最後に、弦を馴染ませる作業を行います。
6弦全てのチューニングを行い、アームをグニャグニャ動かし続けます。
2~3分動かした後、再度、チューニングをします。
これを数回繰り返して、全工程が終了です。
シンクロナイズドトレモロはフローティングとベタ付け、どっちがいい?
これは、ハッキリ言って個人の演奏スタイルによって異なります。
良い悪いではなく、好みの問題です。
それぞれのメリット・デメリットを上げておきますので、アナタ自身のプレイスタイルにどちらがあっているのかを分析してみてください。
フローティングのメリット
- アームアップができる(3mmでは、期待するほどあがりませんけれど・・)
- トレモロスプリングの共振が楽しめる
- アーミングがスムーズに行える
- チョーキングなどで感じるテンション感が柔らかくなる
フローティングのデメリット
- 1本でも弦が切れたら、チューニングがバラバラになる
- 弦交換のたびにフローティング調整が必要
- チューニングが安定するまでに時間がかかる
ベタ付けのメリット
- チューニングが安定する
- 弦が切れても問題ない
- 弦交換の際も調整が少ないのでラク
ベタ付けのデメリット
- アームダウンしかできない。
- アーミングから戻った時に、スプリングの張力が強すぎると、ユニットがボディに当たる音が出る
- 弦の張力をまともに感じるので、弾きにくく感じる
フローティングとベタ付けは一長一短
このように、フローティングとベタ付けには、それぞれ一長一短があります。
ネット上の書き込みには、ベタ付けにしたほうがサスティーンは伸びるという人もいますし。
キンキンという中高音がでるようになったというように多様な意見が有るので、ギターそのものの個体差も、かなり影響するようです。
ですから、アナタの楽器の特性を理解するためにも、色々と試してみることをおすすめします。
ちなみに、我が家のストラトで比較した結果、アーミング後のチューニングの安定性は、フローティングの方が良かったです。
シンクロナイズドトレモロの調整のまとめ
手順のおさらい
最後に、トレモロニットの調整手順を簡単に整理しておきましょう。
- アーミングタッチ調整(トレモロスプリングの本数とかけ方)
- フローティング調整(スプリングハンガーの締め具合)
- 弦高調整(ブリッジの駒部分のイモネジ)
- オクターブ調整(ブリッジを固定しているプラスネジ)
弦を張り替える際には
フローティングさせたストラトの場合は、弦交換のたびにトレモロスプリング調整とオクターブ調整を行わなければなりません。
かなり面倒くさい作業になりますが、この調整をキチンと行わないと楽器のポテンシャルが充分に発揮できなくなります。
特に、オクターブ調整をしっかり行っていないと、バンドのアンサンブル自体が濁ってしまうので、メンバーにも迷惑が掛かってしまいます。
アーミングでチューニングは狂うもの
ここまでしても、アームを使うとチューニングは狂います。
これは、どんなストラトでも同じです。
これを回避するためには、フロイドローズやケーラーのような、チューニングロック式ユニットを導入するしかありません。
しかし、そんな不便なコンディションでも、国内外アーティストでロックシステムを使っていない人は多数います。
では有名アーティストのストラトは、アーミングでも狂わないのか?
決して、そうではありません。
彼らのストラトも、アーミングでチューニングは狂っています。
しかし、彼らは目立たないように対策をとっているのです。
先ほどの私の例ですが、アーミングをすると3弦がシャープしますが、弦を引っ張ると元に戻ります。
ですから、アームを使った後に、必ず3弦をチョーキングするフレーズを入れています。
こうすることで、自然にプレイの中でチューニングを戻すことができるのです。
ノンロックユニットのストラトユーザーは、このような対策をとることによって、トレモロユニットを使いこなしているのです。
シンクロナイズドトレモロユニットは、アーミングでチューニングが狂うのは当たり前!
奏法やフレーズでカバーするのが、真のトレモロユーザー!!
ストラト愛好者たち
ギタリストのプレスタイルは様々で、ストラトを使っていてもアームを使う人と使わない人に分かれます。
アームを使うギタリストは、リッチー・ブラックモアやイングヴェイ・マルムスティーンがいます。
一方で、ストラトを使っていても、アームを使わないというギタリストもいて、その代表的なアーティストにエリック・クラプトンがいます。
エリック・クラプトンのストラトは、アームユニットが絶対に動かないように、ユニットのブロックを木片で固定していることでも有名です。
なぜ、そこまでするのか?
おそらく、弦が切れても絶対にチューニングが狂わないようにするための対策だと思います。
フェンダー社では、このようにアームを使わない人向けに、トレモロレスのモデルも販売しており、このモデルは『ハードテイル』と呼ばれています。
しかし、市場での品数が極端に少ないようで、私はネットでしか見たことがありません。
仕方がないので、自作しています。
又、ロックギタリストではないのですが、「明日に架ける橋」などの楽曲で知られているフォークデュオ、サイモン&ガーファンクルのポール・サイモンは、トレモロユニットを全て撤去し、埋木をしてハードテイル用の、サスティーンブロックが無いタイプのブリッジに交換している例もあります。
アーム機能を使わないのなら、ストラトじゃなくてもいいじゃないか!
そんな意見も有ると思います。
それでも、ストラトユーザーがこだわるのは、音が違うのです。
テレキャスターはキンキンした音が特徴で、ストラトはもう少し高い周波数のシャリーンとしたサウンドが特徴です。
ボディの形状も、ストラトのほうが体にあたる部分がえぐり加工されているので、フィットしやすくなっています。
このように、両者には細かい違いがいくつもあるので、ストラトユーザーはストラトでないとしっくりこないのです。
さて、プレイのスタイルによってアームを使う、使わないという選択が変わりますが、アームを使うのであればキチンと調整しなければ、ストラトの良さは発揮できません。
もし、アナタがアーミングプレイヤーなら、今回ご紹介した内容を参考に、しっかり調整してください。
そうすれば、シンクロナイズドトレモロユニットは、きっと強い味方になってくれるはずです。
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