ノイズゲートの役割とは?
ノイズゲートは、直訳すると「雑音の門」ということになります。
つまり、「門を閉めて雑音を閉じ込める」ということになりますね。
そもそも、ノイズゲートはノイズを減らすエフェクターではありません。
ノイズを通さないことによって、ノイズを目立たなくするエフェクターなのです。
ですから、うまく使いこなさないと不自然なかかり方になったり、逆に全く効果がなかったりしますから、ここで説明する仕組みや各パラメーター、使い方をしっかり理解して、【ノイズの達人】になってください!
ノイズが発生する原因
電気系統ノイズ
まず、コンセントからノイズが乗ることがあります。
特に、日本のコンセントは2極式なので、左右をひっくり返しても差し込むことが可能です。
交流電流にはプラスとマイナスがありますから、日本のコンセントはプラス、マイナスを間違えることが多いのです。
元々、コンセントは交流電流なので、プラス、マイナス、ゼロボルト(アース)が存在します。
そのゼロボルトを接地させることで、各電気製品の電位差が均等化されるため、感電や落雷による被害、電磁波などのノイズを防ぐことができるのです。
ですから、本来、コンセントは3極式(一部のパソコン用電源コードにあります)であるべきなのです。
欧米のコンセントは、プラス、マイナス、アースが独立した3極式コンセントが主流なのですが、日本の場合、2口コンセント(2極式)が主流です。
2極式はマイナスとゼロボルトをくっ付けた状態の簡略式な接続です。
次に、ギターアンプやエフェクターなどのトランスやコイルから発生するノイズなどがあります。
これらは、内部回路のプリント基板や被膜配線から混入して発生するノイズです。
特に、真空管アンプの場合は、熱くなった真空管などの増幅器から「熱雑音」も発生します。
どんな電気製品でも、電子部品を使っている以上は電気的なノイズを発生しているので、それがオーディオ信号に混入すると、ノイズとして聞こえるのです。
外来ノイズ
自然的なノイズには、落雷や太陽雑音があります。
一方で、人工的なノイズにはパソコン、スマートフォン、テレビ、電子レンジ、掃除機などがあり、これらは屋内配線で発生するものです。
又、屋外では、自動車やバイクのエンジンに使われている点火プラグや電車のパンタグラフなどもノイズの発生源となります。
ですから、交通量が多い道路沿いや、近所に電車が通っている室内やスタジオは、電気的には好ましくない環境と言えます。
ノイズゲートでノイズ対策できる仕組み
いよいよ本題です。まず、ノイズゲートの仕組みについて解説していきます。
ノイズゲートとは?
ノイズゲートは「設定した音量以下の音は出さない」というエフェクターです。
逆の言い方をすると、「設定した音量以上の音を通す(出す)」というエフェクターということです。
ノイズゲートというエフェクターに沿った言い方をすれば、設定した音量を境に門を開けるか(通すか)閉める(通さないか)をコントロールするということです。
ノイズゲートの仕組み
エレキギターを弾いていない時に、「ジー」というノイズが聞こえますね。
これって、結構、気になりませんか?
しかし、ピッキングして「ジャーーン」とギターの音が出ている時は、ノイズが消えていますね。
でも、それは違うんです!!
それは、どういうことかを説明します。
まず、ノイズの音量とギターの音量を比較してみましょう。
ノイズの音量の方が小さくて、ギターの音の方が大きいですね。
そこに、すべての理由があります。
なぜならば、人間の聴覚には「マスキング効果」という錯覚が働くからです。
マスキング効果とは「いつもなら聞こえている音が、別の大きな音が発生すると聞こえなくなる」という現象です。
つまり、「ジー」というノイズが鳴り続けていても、それより大きなギターの音が鳴ったら、小さいほうのノイズが聞こえなくなるということなのです。
ですから、実際にはギターの音と一緒にノイズも出ているのですが、聞き取れないということです。
この効果を利用して、ノイズゲートはノイズを目立たなくしているのです。
ではノイズゲートの使い方を見ていきましょう。
ノイズゲートの使い方の手順
すると、弾いていない時のノイズは「門が閉まった状態」なので、ノイズゲートを通過することができません。
結果として、ボリュームがゼロの状態、つまり音がしない状態になります。
この時点で、ノイズは消えました。
ギターの音が出始めたら、丁度いいピッキングで音が出るポイントで設定レベルを決めます。その結果、音量が大きい順に「ギターの音」→「設定したレベル」→「ノイズ」となり、設定したレベルよりも大きいギターの音が入ってくると、ノイズゲートを通過して音が出ますが、設定したレベル以下のノイズは通過できずに音が出ないということになるのです。
つまり、弾いていない時はボリュームがゼロなのでノイズもゼロ、弾いたときはボリューム全開でギターの音(ノイズも含む)が出るということです。
その結果、ノイズが目立たなくなるというのが、ノイズゲートの仕組みです。
ノイズゲートのコントロールと設定
ノイズゲートのパラメーターについて説明します。
ギター用のノイズゲートは、ここまで詳細なパラメーターはありませんが、DTMやDAWユーザーもご覧になっていると思いますので、それを含めて解説しておきます。
THRESHOLD(スレッショルド)
スレッショルドは、ノイズゲートの音が出る出ないの境界レベルのことです。
これを超える音量が入ってきたときに音が出る(ゲートが開く)というパラメーターで、先ほどまで、私が説明していた「設定したレベル」がこれです。
ATTACK(アタック)
アタックは、音の出始めの部分を調整するパラメーターです。
アタックを速くするとピッキングと同時に音が出るので、違和感なく演奏することができます。
逆にアタックを遅く設定すると、ボリューム奏法(フェードインの状態)の効果を作り出すことができます。
ギター用のエフェクターでは、BOSSのSlow GearやBEHRINGERのSlow Motionなどのエフェクターに付いているパラメーターです。
一般的にギター用のノイズゲートには、付いていない機能です。
RELEASE(リリース)
リリースは音の消え方をコントロールするパラメーターです。
ギターの音量がスレッショルド以下まで下がった時の、音の消え方を調整します。
リリースを速くすると、ピッキングをミュートしたと同時に音が消えますが、リリースを長くするほどフェードアウトの時間が長くなります。
HOLD(ホールド)
スレッショルドを超えてから、ゲートが開いている時間を強制的にコントロールするパラメーターです。
ここを長くとることで、音量がスレッショルドを下回っても音を出し続けることができます。
レコーディングやPAで使用する19インチのラックマウントエフェクターに付いているパラメーターで、ギター用ノイズゲートには付いていない機能です。
RANGE
レンジは、ノイズゲートが閉じたときの音量です。
ギター用のノイズゲートはスレッショルド以下のボリュームをゼロにしますが、レンジを上げておくと、ゲートが閉じたときの音量をゼロまで下げません。
つまり、スレッショルド以下のレベルの時でも小さく音が出続けるということです。
ゲートが閉じても、ストンと途切れた違和感が少なくなります。
ギターよりはPAやレコーディングでドラムの音を扱うときに威力を発揮するパラメーターです。
ノイズゲートに関する接続や使い方の注意点
注意点1:不自然にならないように
ノイズゲートを使う際、一番の注意点は、【不自然にならないこと】です。
そのために注意することは、リリースです。
ギターソロの場合は、リリースは長めにとったほうが自然です。
サスティーンを意識したリリース設定にしないと、ロングトーンの途中で音が「ブツッ」と途切れて台無しになってしまいます。
逆に、バッキングでブリッジミュートやカッティングをしているときは、リリースを短くしておかないとゲートが開きっぱなしになって、ノイズが目立ってしまいます。
アップテンポな曲なら、多少、開きっぱなしでも目立ちませんが、バラードの場合は気を付けなければなりません。
注意点2:ピッキングの強さ
ノイズゲートをかけている時の演奏上の注意ですが「強めのピッキング」を意識することがノイズゲートをうまく扱うコツです。
微妙なニュアンスの優しいタッチだと、ゲートが開かない場合があります。
そうかと言って、スレッショルドを低めに設定しすぎると、弦を触っただけでゲートが開いてしまいますから、スレッショルドは、なるべく高めに設定しておいて強めのピッキングにすることをおすすめします。
ノイズゲートは必要か?
人それぞれ、プレイスタイルによると思いますが、個人的には、ギターにはなるべく使わないようにしています。
なぜならば、リリースの設定でギタープレイがかなり制約を受けるからです。
しかし、ノイズゲートは必要な場合あるので、絶対に使わないわけではありません。
私の場合のノイズゲートの使い方と設定は、カッティングの合間にゲートが開いているのが気になるので、リリースは短めに設定します。
すると、ギターソロの終わりの音を伸ばすわけにいかなくなるので、すべてグリスダウンでフレーズを終わらせることになるため不満が残るからです。
ですから、ノイズゲートを使うよりも、エフェクターやアンプでノイズを減らす設定を工夫します。
ギターもストラト信者ですが、ピックアップをシングルハムにチェンジしてノイズ対策をしています。
私がおすすめするノイズゲートのつなぐ順番と位置
理想的にはギターのすぐ後
ノイズゲートは音量で作動するエフェクターなので、接続順によって扱い易さが変わります。
なぜならば、音量の強弱にメリハリがついている位置でノイズゲートを接続したほうが、スレッショルドが安定し、誤作動は少なくなるからです。
逆に、コンプレッサーやディストーションなどを使うと、それらを通過するごとに、音が潰れて音量差が少なくなります。
このように、音量差が平均化されるほど、スレッショルドの設定が難しくなってしまうのです。
効果的な接続順
ノイズゲートを接続する位置は、なるべくエフェクターのノイズが出きった所につなぐのが効果的です。
特にノイズが多く出るコンプレッサーなどのダイナミクス系、ディストーションやファズなどの歪み系よりは後に接続した方が良いでしょう。
フランジャーやフェイザーなどのモジュレーション系エフェクターは、弾いていない時に「シュワ~シュワ~」と気になる音が出ていたら、それらの後に接続します。
しかし、リバーブやディレイなどの空間系エフェクターの後にノイズゲートをつなぐと、減衰音が「ブチッ」と途切れてしまうので、それらの前に接続するほうが無難です。
整理しますと、以下の順番がノイズゲートの接続順のベストだと思います。
ギター → ダイナミックス系 → 歪み系 → モジュレーション系 → ノイズゲート → 空間系
DAW・DTMユーザー向けの使い方アドバイス
ここで、プロのミキシング・エンジニアが使うノイズゲートのテクニックをご紹介します。
それは、ドラムの音、特に生ドラムの音に「締り」がないときに、ノイズゲートを使って余韻を切るという方法です。
例えば、バスドラムの音がドーン、ドーンとなっていたり、スネアの音がトーントーンとかポンポンいう音でミュートが甘いときなど、ノイズゲートでスレッショルドが開くギリギリのレベルに設定し、ホールドで響きの長さを調整し、リリースで「スパッ!」と余韻を切るのです。
バスドラムは、「ドッ!ドッ!」とタイトな音になるので、そのまま使えます。
一方で、スネアは「トットッ」と多少不自然に感じるくらい大げさに余韻を切っておきます。
そこへ、ごく短いルームリバーブをかけることで、自然で歯切れの良い音を作ることができるのです。
OBS Studioとの違い
ネット上にライブ配信するためのツールに『OBS Studio』があります。
そのアプリ(OBS Studio)の中に『マイクのためのフィルタ』という機能があり、ノイズゲートが入っています。
これは、自宅で配信するユーザーのために生活音などを消去するためのもので、不要な音を出すか出さないかという簡単なものです。
ですから、操作するパラメーターもシンプルで、以下の2つしかありません。
- 閉鎖閾値
-
この音量より小さい音は出さない
- 解放閾値
-
これより大きい音量は出す
OBS Studioのノイズゲートが、エフェクターのノイズゲートと違う点は、
- アタックやリリースが設定できないこと
- スレッショルドが閉鎖レベルと解放レベルの2つあり個別に設定できること
以上の2点です。
おすすめのノイズゲート
ISP DECIMATORⅡ
ノイズゲートの決定版といっても良いくらいみんな使用しています。
シンプルで使いやすい、それでありながら高性能という優れもの。
シンプルだけど、性能もまあまあなんてもんじゃないのがDECIMATORⅡ。
その操作性は初心者にもオススメですし、簡単に高性能を引き出すことができます。
BOSS Noise Suppressor(NS-2)
ボスのノイズサプレッサーは、単なるノイズゲートではなく、ノイズリダクション機能を備えたエフェクターです。
使い方は独特で、ノイズが気になるエフェクターをNS-2のセンドリターンに接続するという方法になります。
他のエフェクターのように直列接続ではないので、自分のシステムのどの位置に入れるか?・・悩みますね。
値段が安いという事でとっつきやすいノイズゲートです。
Drawmer DS201
Drawmerは、ドローマーと読みます。
スレッショルドやディケイ(リリース)以外に、アタック、ホールド、レンジ、キーソース用のフィルター、ゲート/ダック切り替えなど、ノイズゲートに必要な機能は全てそろっています。
DTMやDAWだけでなく、ネット動画配信など、幅広いユーザーにおすすめできる1台です。
Drawmer DS201を通販でチェック
以下の記事ではおすすめのノイズゲートランキングを紹介していますので、参考にしてみてください
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